国文科12期生遠藤美記さんの『ひとりぼっちの部屋-メケのメッセージ』(遠藤美記著・遠藤悦子編著)が、本学名誉教授故松坂俊夫先生の著書『やまがた本の郷土館』(みちのく書房)第二巻(214ページ~215ページ)に掲載されていますので紹介します(本文および資料は、みちのく書房の許可を得て転載)。
こだまする生命の歌 「ひとりぼっちの部屋」 遠藤美記
「日記様
私はあなたになんでも話します。そんな時一緒に考えてね。時々忘れることあるけど、忘れずに書くようにします。十一歳の少女 メケより」
〈メケのメッセージ〉と副題のある『ひとりぼっちの部屋』は、遠藤美記(南陽市生まれ、一九五九~一九九三)の主として小学校から、高校卒業までの、日記をはじめ詩や文章を、母の遠藤悦子が選録した遺稿集である。ここからは、迷い悩みながらも、ひたむきにそして真率に、自分の道を求めて歩み続けた、若い生命の歌がこだまのように響いてくる。
「幸せは悲しみと打ち勝って自分の手で作り出すもの、それが幸せだと思います。あなたはどうですか」
「物語が始まるのは楽しいけれど、終るというのは悲しいことです。始めがあれば終りがある。人間だって生まれたら必ず死ななければならない」
小学生時代の日記に、すでにしっかりと眼を見開いて、人生の奥義に達する感想を数多く記している。
海は四つの顔をもっている 何度つきとばされてもまた
やさしい顔と情熱的な顔 あなたの前に立つ
さびしい顔とはげしい顔と 私はそんな執念がほしい
私は今、はげしいあなたの前に立ちたい (海)
中学生になると、詩作も増え小説の習作「男のゆめ、女のゆめ」や、叙事詩「悲しい犬の物語」なども書かれ、著者の志向は文学を指す一方、自己省察とその理想は、たしかな焦点を結びはじめる。
「一人ぼっちなのに友を求めている。人間が嫌いと言って人を愛している。」
「愛されるよりも人を愛することの出来る人になりたい。誰もみてない所でも、みんながいやがる事を出来る様な人に。」
収載量は少ないが、高校・短大時代の日記にもこれまで同様、読書・音楽・映画・宗教のことをはじめ、友人・学校のことなど、「もっともっとしたいことがたくさんある。ありすぎる。ため息が出そう。」と記す著者の、あふれるほどに充実した日々が綴られている。
集中の圧巻は、著者が病気で退職するまで十四年間勤務した「いわさきちひろ絵本美術館」に就職の際の課題文「ちひろの絵と人生」(二千字)であろう。ここには、ちひろの絵の持つやさしさと、そのやさしさの由来を、そしてみずからの願いを、誠実に愛情を傾けて記しており、感銘深いエッセイである。
『ひとりぼっちの部屋』は、一九九五年五月、東神文化企画の刊。著者写真および自筆デッサン多数。はじめに・遠藤公夫、カバー付き、B6判、二六〇ページ。本書は、念願の職場と夫に出あい、一児を得ながら三十五歳で早世した娘への両親のレクイエムとして編まれている。
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こだまする生命の歌 「ひとりぼっちの部屋」 遠藤美記
「日記様
私はあなたになんでも話します。そんな時一緒に考えてね。時々忘れることあるけど、忘れずに書くようにします。十一歳の少女 メケより」
〈メケのメッセージ〉と副題のある『ひとりぼっちの部屋』は、遠藤美記(南陽市生まれ、一九五九~一九九三)の主として小学校から、高校卒業までの、日記をはじめ詩や文章を、母の遠藤悦子が選録した遺稿集である。ここからは、迷い悩みながらも、ひたむきにそして真率に、自分の道を求めて歩み続けた、若い生命の歌がこだまのように響いてくる。
「幸せは悲しみと打ち勝って自分の手で作り出すもの、それが幸せだと思います。あなたはどうですか」
「物語が始まるのは楽しいけれど、終るというのは悲しいことです。始めがあれば終りがある。人間だって生まれたら必ず死ななければならない」
小学生時代の日記に、すでにしっかりと眼を見開いて、人生の奥義に達する感想を数多く記している。
海は四つの顔をもっている 何度つきとばされてもまた
やさしい顔と情熱的な顔 あなたの前に立つ
さびしい顔とはげしい顔と 私はそんな執念がほしい
私は今、はげしいあなたの前に立ちたい (海)
中学生になると、詩作も増え小説の習作「男のゆめ、女のゆめ」や、叙事詩「悲しい犬の物語」なども書かれ、著者の志向は文学を指す一方、自己省察とその理想は、たしかな焦点を結びはじめる。
「一人ぼっちなのに友を求めている。人間が嫌いと言って人を愛している。」
「愛されるよりも人を愛することの出来る人になりたい。誰もみてない所でも、みんながいやがる事を出来る様な人に。」
収載量は少ないが、高校・短大時代の日記にもこれまで同様、読書・音楽・映画・宗教のことをはじめ、友人・学校のことなど、「もっともっとしたいことがたくさんある。ありすぎる。ため息が出そう。」と記す著者の、あふれるほどに充実した日々が綴られている。
集中の圧巻は、著者が病気で退職するまで十四年間勤務した「いわさきちひろ絵本美術館」に就職の際の課題文「ちひろの絵と人生」(二千字)であろう。ここには、ちひろの絵の持つやさしさと、そのやさしさの由来を、そしてみずからの願いを、誠実に愛情を傾けて記しており、感銘深いエッセイである。
『ひとりぼっちの部屋』は、一九九五年五月、東神文化企画の刊。著者写真および自筆デッサン多数。はじめに・遠藤公夫、カバー付き、B6判、二六〇ページ。本書は、念願の職場と夫に出あい、一児を得ながら三十五歳で早世した娘への両親のレクイエムとして編まれている。
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