山形短期大学民話研究センター資料叢書『たかみねと秋田の昔話』を民話研究センターで刊行しました。本書は、民話研究センター顧問の武田正先生が収集してガリ版で作成した原本を活字化したものです。「あとがき」を紹介します。
あとがき
第一部の飯豊町高峯の昔話、第二部の秋田の昔話、ともに昭和五十二年八月の調査によるものである。できる限り、テープにしたものを正確に表記するよう努力したつもりである。
飯豊町の調査、町当局の全面的協力により、置賜民俗学会の江田忠会長を中心に、奥村幸雄、金子正広、渡部勉の各氏と共に参加したもので、十分な予備調査ができなかったこと、白川ダムの建設という部落の実状などもあって、十分ではなかったが、岡田さん、井上武夫両氏をはじめ、多数の方々から貴重な昔話及び伝説をお聞きできました。三つの地区だけの調査を、さらにひろげたいと考えていますが、ともかく変貌の激しい地区の昔話の現状を示す資料と考えてよいのではないかと思います。調査の折に全面的協力を下さった町当局はじめ地区の方々に感謝いたします。
秋田の調査は教え子の幸野敦子さんの御努力、協力で、秋田県立博物館の木崎和広氏及び嶋田忠一氏の紹介を受け、金足の黒川の古谷長之助氏の語りを聞くことができました。折も折、盆踊りの日に当たり、多忙の中を嶋田氏に同行いただいて、稀に見る話者にめぐり合えたのは、幸運そのものでした。一気に十四話の昔話を聞くことができ、語りのすばらしさに聞きほれてしまったものです。
初めて聞く秋田の昔話の中で、特に注目すべきは、「御詠歌の昔話」二話で、明らかに昔話の系譜及び「語り」の系譜の中に僧侶によるものがあることは、すでに指摘されてはいますが、それらが現在まで、どんな形で伝承されてきているかを示す資料が、ごくわずかしかなかったことを考えれば、いかに貴重なものかということです。いわゆる「仏教説話」という形ではなしに、民間で最もしたしい「御詠歌」という形である点が、特に注目されるところです。
先に『山形の民話』三十二号(昭和五十三年一月)で、古谷氏の語ってくれた「御詠歌の昔話」を紹介したところ、さっそく小国町大石沢の百話クラスの話者川崎みさをさんよりお手紙をいただき、御詠歌第七番大和国東光山岡寺、第二十一番丹波国菩提山穴太寺のものにも、昔話があるということを思い出して下さいました。これについては、次号『山形の民話』三十三号に紹介させていただくことにしたいと思っております。
古谷さんは若い頃から村の子どもたちを集めて昔話を語ってやったという経験の持ち主ですから、いわばその地の「語りじいさん」の役割を果たしておられた方と見ることができそうです。残念なことに、一日だけのことでしたから、知っている昔話のすべてをお聞きしたいとは思いながら果たせないのは残念です。
改めて両先輩及び幸野さんには感謝申し上げ、古谷さんの昔話の今後の収集をお願いしたいところです。
帰りは大雨の中でしたが、駅前のコーヒーの温かさが身にしみました。ショッツルのタレもおいしくいただきました。汽車は大水のため、途中速度をおとして三十分の遅れで山形に到着しましたが、そのためにかえって、秋田の鉄道の沿線の風景などをゆっくり見物することができました。それにもまして、汽車の中で「御詠歌の昔話」の意味をあれこれ考えさせられて、自分の今迄の調査の一つの盲点を知らされたことに興奮していたことを思い出します。この「御詠歌の昔話」を含めて、秋の日本民俗学会年会(会場・東洋大学)に発表しましたが、今後の研究の課題が明確化したことでうれしく思っています。
整理を終えるのが遅かったため、皆様に申しわけなく、毎晩遅くまでガリ板を切りましたが、そのためかえって、見づらく出てしまったのをお詫びします。
昭和五十三年一月三十日
山形短期大学民話研究センター資料叢書(再刊年)
『置賜平野の昔話(二)』(2009年12月)
『置賜平野の昔話(一)』(2009年12月)
『なら梨とり 赤湯の昔話』(2009年12月)
『川崎みさをさんの昔話』(2009年7月)
『カマイタチ 東根昔話集2・置賜昔話補遺』(2009年7月)
『木小屋の生活 民話序説』(2009年7月)
『飯豊山麓 中津川昔話集(下)』(2009年7月)
『飯豊山麓 中津川昔話集(上)』(2009年7月)
『ちょうじやのむこ』(2008年12月)
『さるむこ 田沢の伝説と昔話』(2008年12月)
『つゆふじの伝説 安部忠内・稿』(2008年12月)
『お糸唐糸 故安部忠内翁/安部はつよ嫗 米沢の昔話集』(2008年12月)
『田の中の田三郎 近きよ嫗昔話』(2008年12月)
『鬼と豆のくいくら 小国町昔話集(三)』(2008年6月)
『さとりのお化け 小国町昔話集(二)』(2008年6月)
『お杉お玉 小国町昔話集(一)』(2008年6月)
『蛇むこむかし しらたかの民話』(2008年4月)
『飯豊町昔話集-大平・新沼・高畑-』(2008年4月)
『牛方と山姥(四) 海老名ちやう昔話 第四集』(2008年1月)
『続々牛方と山姥 海老名ちやう昔話 第三集』(2008年1月)
『続牛方と山姥 海老名ちやう昔話 第二集』(2008年1月)
『牛方と山姥 海老名ちやう昔話 第一集』(2008年1月)
『及位の昔話(三)』(2007年7月)
『及位の昔話(二)』(2007年7月)
『お婆の手ん箱(一) 阿部キヌオさんの語り』(2007年7月)
『行けざんざん 小国町昔話集』(2007年4月)
『かっぱの硯 長井市・米沢市六郷の昔話』(2007年4月)
『まま子いじめ 米沢市六郷・宮井の昔話(一)』(2007年4月)
『佐兵ばなし』(2007年4月)
『及位の昔話(五)』(2006年10月)
『及位の昔話(四)』(2006年12月)
『及位の昔話(一)』(2006年7月)
『高畠町和田の昔話』(2006年7月)
『安楽城の伝承(三)』(2006年6月)
『安楽城の伝承(二)』(2006年6月)
『安楽城の伝承(一)』(2006年3月)
『米沢市塩井の昔話』(2006年3月)
『米沢市簗沢の昔話』(2006年3月)
『むがしあったけど』(2006年3月)
『西川町の昔話』(2006年3月)
民話研究センター関連ページ
山形短期大学民話研究センター
民話研究センターのページ
民話アーカイブ
山形短期大学附属図書館企画展示"山形県の民話"
あとがき
第一部の飯豊町高峯の昔話、第二部の秋田の昔話、ともに昭和五十二年八月の調査によるものである。できる限り、テープにしたものを正確に表記するよう努力したつもりである。
飯豊町の調査、町当局の全面的協力により、置賜民俗学会の江田忠会長を中心に、奥村幸雄、金子正広、渡部勉の各氏と共に参加したもので、十分な予備調査ができなかったこと、白川ダムの建設という部落の実状などもあって、十分ではなかったが、岡田さん、井上武夫両氏をはじめ、多数の方々から貴重な昔話及び伝説をお聞きできました。三つの地区だけの調査を、さらにひろげたいと考えていますが、ともかく変貌の激しい地区の昔話の現状を示す資料と考えてよいのではないかと思います。調査の折に全面的協力を下さった町当局はじめ地区の方々に感謝いたします。
秋田の調査は教え子の幸野敦子さんの御努力、協力で、秋田県立博物館の木崎和広氏及び嶋田忠一氏の紹介を受け、金足の黒川の古谷長之助氏の語りを聞くことができました。折も折、盆踊りの日に当たり、多忙の中を嶋田氏に同行いただいて、稀に見る話者にめぐり合えたのは、幸運そのものでした。一気に十四話の昔話を聞くことができ、語りのすばらしさに聞きほれてしまったものです。
初めて聞く秋田の昔話の中で、特に注目すべきは、「御詠歌の昔話」二話で、明らかに昔話の系譜及び「語り」の系譜の中に僧侶によるものがあることは、すでに指摘されてはいますが、それらが現在まで、どんな形で伝承されてきているかを示す資料が、ごくわずかしかなかったことを考えれば、いかに貴重なものかということです。いわゆる「仏教説話」という形ではなしに、民間で最もしたしい「御詠歌」という形である点が、特に注目されるところです。
先に『山形の民話』三十二号(昭和五十三年一月)で、古谷氏の語ってくれた「御詠歌の昔話」を紹介したところ、さっそく小国町大石沢の百話クラスの話者川崎みさをさんよりお手紙をいただき、御詠歌第七番大和国東光山岡寺、第二十一番丹波国菩提山穴太寺のものにも、昔話があるということを思い出して下さいました。これについては、次号『山形の民話』三十三号に紹介させていただくことにしたいと思っております。
古谷さんは若い頃から村の子どもたちを集めて昔話を語ってやったという経験の持ち主ですから、いわばその地の「語りじいさん」の役割を果たしておられた方と見ることができそうです。残念なことに、一日だけのことでしたから、知っている昔話のすべてをお聞きしたいとは思いながら果たせないのは残念です。
改めて両先輩及び幸野さんには感謝申し上げ、古谷さんの昔話の今後の収集をお願いしたいところです。
帰りは大雨の中でしたが、駅前のコーヒーの温かさが身にしみました。ショッツルのタレもおいしくいただきました。汽車は大水のため、途中速度をおとして三十分の遅れで山形に到着しましたが、そのためにかえって、秋田の鉄道の沿線の風景などをゆっくり見物することができました。それにもまして、汽車の中で「御詠歌の昔話」の意味をあれこれ考えさせられて、自分の今迄の調査の一つの盲点を知らされたことに興奮していたことを思い出します。この「御詠歌の昔話」を含めて、秋の日本民俗学会年会(会場・東洋大学)に発表しましたが、今後の研究の課題が明確化したことでうれしく思っています。
整理を終えるのが遅かったため、皆様に申しわけなく、毎晩遅くまでガリ板を切りましたが、そのためかえって、見づらく出てしまったのをお詫びします。
昭和五十三年一月三十日
山形短期大学民話研究センター資料叢書(再刊年)
『置賜平野の昔話(二)』(2009年12月)
『置賜平野の昔話(一)』(2009年12月)
『なら梨とり 赤湯の昔話』(2009年12月)
『川崎みさをさんの昔話』(2009年7月)
『カマイタチ 東根昔話集2・置賜昔話補遺』(2009年7月)
『木小屋の生活 民話序説』(2009年7月)
『飯豊山麓 中津川昔話集(下)』(2009年7月)
『飯豊山麓 中津川昔話集(上)』(2009年7月)
『ちょうじやのむこ』(2008年12月)
『さるむこ 田沢の伝説と昔話』(2008年12月)
『つゆふじの伝説 安部忠内・稿』(2008年12月)
『お糸唐糸 故安部忠内翁/安部はつよ嫗 米沢の昔話集』(2008年12月)
『田の中の田三郎 近きよ嫗昔話』(2008年12月)
『鬼と豆のくいくら 小国町昔話集(三)』(2008年6月)
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『お杉お玉 小国町昔話集(一)』(2008年6月)
『蛇むこむかし しらたかの民話』(2008年4月)
『飯豊町昔話集-大平・新沼・高畑-』(2008年4月)
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『続々牛方と山姥 海老名ちやう昔話 第三集』(2008年1月)
『続牛方と山姥 海老名ちやう昔話 第二集』(2008年1月)
『牛方と山姥 海老名ちやう昔話 第一集』(2008年1月)
『及位の昔話(三)』(2007年7月)
『及位の昔話(二)』(2007年7月)
『お婆の手ん箱(一) 阿部キヌオさんの語り』(2007年7月)
『行けざんざん 小国町昔話集』(2007年4月)
『かっぱの硯 長井市・米沢市六郷の昔話』(2007年4月)
『まま子いじめ 米沢市六郷・宮井の昔話(一)』(2007年4月)
『佐兵ばなし』(2007年4月)
『及位の昔話(五)』(2006年10月)
『及位の昔話(四)』(2006年12月)
『及位の昔話(一)』(2006年7月)
『高畠町和田の昔話』(2006年7月)
『安楽城の伝承(三)』(2006年6月)
『安楽城の伝承(二)』(2006年6月)
『安楽城の伝承(一)』(2006年3月)
『米沢市塩井の昔話』(2006年3月)
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『むがしあったけど』(2006年3月)
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